学校日記

「どんなストレスもプラスにできる」 (9月7日)

公開日
2013/09/08
更新日
2013/09/08

隅田中日記

 新聞記事 『101歳・私の証 あるがまゝ行く(日野原重明)』を紹介します。
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           「どんなストレスもプラスにできる] 
 私はあと2カ月で満102歳になります。講演や原稿執筆をこなす忙しい毎日ですが、私にとってそれは精神的負担どころか、むしろ社会から必要とされている喜びであって、私の「よいストレス」となっています。
 そんな私も長い人生の中で、色々な苦難、ストレスを経験しました。1970年、58歳の時、私は「よど号」ハイジャック事件に遭遇し、死の不安にさらされながら3泊4日、機内に拘束されました。当時の運輸政務次官の山村新治郎氏の犠牲的行動で、私を含む乗客約100人の命が助けられました。タラップを降り、韓国の金浦空港の土を踏んだ時、私は靴の下に「救いの大地」を感じました。心身に受けた壮絶なストレスを、自分にとってプラスに転換し、私の新しい人生が始まりました。いわば私は「再生」したのです。
 ストレスという概念を一般に広めたのは、カナダの生理学者ハンス・セリエ博士(1907〜1982)でした。ストレスは元々は工学用語です。鉛の棒を両側から強く押すと、棒は「く」の字に曲がります。この状態を、セリエ博士は人間の心理状態を表す言葉に使いました。人間に嫌な心理的重圧=ストレスが加わると、脳下垂体、副腎などからホルモンが分泌されて、高血圧、糖尿病、消化管潰瘍(かいよう)、免疫力の低下など、体にも悪い結果をもたらします。のど元にある甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されますが、それが過剰な時はバセドウ病、少ない時は甲状腺機能低下症と呼ばれます。分泌がちょうど良く保たれているのが、望ましい状態です。
 ですが晩年、セリエ博士はストレスにもよい面があることに気づき、それをユーストレス(eu−stress)と名付けました。たとえば、ヨットが逆風に遭っても、帆の張り方を変え、一端に体を傾ければ、風上に進めます。同様に、人間は悪いストレスを良いストレスに変えることができるのです。
 私の人生にとって、金浦空港で踏みしめたあの一歩は、前年の1969年、宇宙飛行士として人類初の月面探索に成功したアームストロング氏が無事、地球に帰還した時、足の裏に感じたであろう思いと、共通するのではないか。私は今でもそう思っています。
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